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東京地方裁判所 昭和46年(借チ)16号 決定

〔主文〕1 申立人が、本裁判確定日の翌日から六か月以内に、相手方に対し、金一三〇万円を支払うことを条件に、別紙目録(一)記載の賃貸借の目的を堅固建物所有に変更する。

2 前項の金員が支払れた場合、別紙目録(一)記載の借地条件中期間を右金員支払の日の属する月の翌月から三〇か年に、賃料を一か月金七九二〇円(3.3平方米当り金三九六円)にそれぞれ変更する。

〔理由〕一 本件申立の要旨

(一) 申立人は、昭和三八年一〇月一日相手方から別紙目録(一)の1記載の土地(以下「本件土地」という。)を賃借し、ここに、同目録(二)記載の建物を所有している。

(二) 本件土地賃貸借の現在の借地条件は、同目録(一)記載のとおりである。

(三) 本件土地附近は、右契約締結当時場末的雰囲気があり、商業地とも住宅地ともつかず、営業的利用に制約があった。しかし現在は、土地価格も高謄し、都営住宅も建築され、不燃建物が建築されつゝあり、現に借地権を設定するとすれば、堅固な建物の所有を目的とするのが相当であるに至つた。

(四) そこで、申立人は、本件賃貸借の目的を堅固建物所有に変更し、鉄骨耐火造四階建(付塔屋)を建築すべく計画中であるが、右借地条件の変更につき、相手方との協議が調わないので、右借地条件変更の裁判を求める。

二 当裁判所の判断

(一) 本件で取調べた資料によれば、本件土地は、もと宮崎清三が相手方から賃借し、本件建物を建築したが、昭和三八年一〇月相手方の承諾をえて、申立人に対し、右賃借権付の建物を譲渡し、その際、期間を更新したこと、本件土地の現借地条件は別紙目録(一)記載のとおりであることが認められる。

ところで、右のごとく、借地権譲渡がなされる場合は、譲受人は、すでに非堅固建物の存在を前提として譲渡をうけるのであるから、堅固な建物所有を相当とする事情の変更の有無については、右譲渡前の原借地権の成立時を基準とすべきである。そして前記資料によれば、譲渡前の本件賃借権の成立時である昭和二五年ごろにおいては、本件土地附近は、木造建物が大部分であり、借地権も非堅固借地権を設定するのが通例であったと推認しうるが、現在は、準防火地域、準工業地域、第四種容積地区に指定され、附近一帯には漸時堅固な建物が建築されつゝあり、右の傾向は今後一層増加するものとみられ、本件土地につき、現に借地権を設定するとすれば堅固建物所有を目的とするのが相当な地域に至つたものと認められる。他に本件借地条件の目的を堅固建物所有に変更するのを不当とする事由はない。相手方は、申立人計画による堅固建物により相手方の居宅の日照が奪われると主張するが、本件土地に中層建物が建築されることにより相手方の居宅の日照が悪くなることは考えられるが、右影響を受ける部分は、相手方が有している土地部分の一部にすぎず、本件土地附近のごとく、都内の商工業地にあっては、右の程度の日照の影響は、相手方としてやむをえないものとして受忍すべきである。また、相手方は申立人の改築計画が建築基準法の制限に反すると主張するが、借地条件変更の裁判は、借地条件の目的じたいを変更するもので、特段の条件を付さないかぎり、具体的な改築許可ではないのであるから、右目的変更後の改築が建築関係法規に適合しなければならないことは当然であるが、現在の計画じたいの適否は申立を不当とする事由にはならない。

(二) 附随の処分につき検討する。

1 鑑定委員会の意見の要旨は、「申立人に財産上の給付金として金一、〇六四、〇〇〇円を支払わせ、地代を金五、六一六円(3.3平方米当り金二八〇円)にするのが相当である。すなわち、本件土地の更地価格を3.3平方米当り金六五万円合計金一、三〇〇万円、借地権価格をその八〇%と評価し、今後一二年後と三二年後の更新料の現価(年率六%)は金五九五、〇〇〇円となる。給付金は右の額に、利用効用度の増加分として、現行地代の一二年分の現価と、期間延長分の増加額として前記得べかりし更新料に効用増率(0.56)を乗じたものの合計額金四六八、二〇〇円を加算すると上記のとおりとなる。地代については、昭和三八年から地価の上昇率に効用率を乗じて求める。」というにある。

2 当裁判所は、本件土地賃貸借の目的変更に伴い、借地法二条、七条の趣旨により、借地期間を後記給付金支払の日の属する月の翌月から三〇か年に変更する。ところで、本裁判により、借地期間が延長され、建物朽廃による借地権消滅の危険を減じ、建物買取価額の増加による土地明渡請求を制限する等の効果を生し、結局相手方の土地返還の期待を減じる不利益を与え、申立人にこれに応じた利益を与える。そこで、右利害を調整するため、申立人に財産上の給付を命ずべく、右の利害は、いずれも借地権価格を形成する考慮要素であるから、給付金は、裁判前後の具体的借地権価格の差によって算定しうる。しかして、目的変更による借地権の価格差は更地価格の一〇%を指標とし、本件借地権の残存期間、現行賃料および後記改訂賃料ならびに本件建物の老朽度をみるに、右標準値を変更する必要はない。そこで申立人に対し、鑑定委員会の評価した本件土地の更地価格の一〇%にあたる金一三〇万円の支払を命ずる。

鑑定委員会は、給付金を更新料と利用効用度の増加額を加算して求めている。更新料が、慣行率じたいでなく、期間満了の際の更新の危険度を勘案した合理的なものであれば、期間延長による不利益を補うものとして給付金の根拠の一つになしうるが、借地期間は、借地権の消滅の一事由にすぎず、期間的不利益としての更新料のみを単独で給付金の算定基礎とするのは相当でない。また利用効率の増加は、宅地の経済価値の増加をもたらし、地代徴収権の対象たる底地価格を増加させるので、後記のとおり賃料の改訂につき考慮されるべきであるが、右利用効率の増加じたいが賃貸人に不利益をもたらさないかぎり、これを賃貸人に配分すべき合理的な理由をみ出し難い。

3 賃料について判断する。本件資料によれば、本件賃料は、昭和三八年一〇月に定められ、現在その額につき係争中であるが、本件借地権の目的変更前の価格は更地価格の八〇%であり、更地価格の一〇%にあたる金員を財産上の給付金として支払を命じること前示のとおりであるから、賃貸人の地代徴収権は、本件土地が目的変更により最有効に使用されるものであることを考慮し、更地価格の一〇%とし、賃料は、これに年六%を乗じて公租公課(3.3平方米当り年金八五七円)を加算して求めると、本件賃料は3.3平方米当り月額金七九二〇円(3.3平方米当り金三九六円)となる。右賃料は、給付金との関連、合意賃料からみて不当ではないので、目的変更後の賃料は右のとおり定める。鑑定委員会は、現行賃料に上昇率、効用率を乗じているが、効用増加率を、階層による指数から求めることおよび上昇率の根拠が明らかでないので採用しない。(筧康生)

目録 (一)

(借地条件)

1 目的土地 東京都台東区根岸五丁目六番一号

宅地 234.61平方米

(70.97坪)のうち、66.11平方米

(二〇坪)

2 賃貸人 相手方

3 賃借人 申立人

4 目的 非堅固建物所有

5 期間 昭和三八年一〇月一日から二〇か年

6 賃料 一か月金二、四〇〇円(3.3平方米当り金一二〇円)ただし係争中

目録 (二)

(現存建物)

東京都台東区根岸五丁目六番

家屋番号 六番四

木造瓦葺二階建居宅

一階 38.84平方米

(11.75坪)

二階 26.44平方米

(8.75坪)

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